第303章

 本来であれば、山下那美はこれほど周到に準備したのだから、失敗などあり得ない——そう高を括っていた。

 だが、現実は非情だった。彼らに即座に見破られ、咄嗟の機転で逃走していなければ、今頃どうなっていたかわからない。

 息を切らせてアジトから逃げ延びた先で、山下那美の脳裏に浮かんだのは、かつての『貢ぐ君』の顔だった。

 高遠令治。

 自分が今の姿に変わることができたのも、彼との少なからぬ因縁があったからだ。

 決して路頭に迷ったわけではない。ただ、望月琛と前田南がのうのうと暮らしているのが許せなかった。だからこそ、彼女は高遠令治の番号をプッシュしたのだ。

「おや、これはこれは大塚の...

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